• 大島丸

【大島丸代船建造 プロジェクト】第17回

【大島丸代船建造 プロジェクト】紹介

通称:MNP(MOTUNUI PROJECT)
(モツヌイ:大島に関連のあるハワイの言葉で、大きな島という意味)

夏の味方、エアコンについて

キャプテン、このところずっと暑いですね。

酷暑による熱中症への警戒が毎日呼びかけられているよね。
夏休み中とはいえ、日中の外出には気をつけて。
対策には水分補給も大切だけど、室内では適度な温度管理が最も重要だろう。

夏に暴露甲板やエンジンルームでの実習が終わって、学生ホールに戻るとエアコンが効いていて、とても幸せな気分になります。
エアコンが無かったら、どうしようかと思います。
ところで、代船にはどんなエアコンを採用するのですか?

代船のエアコンにはチラーシステムを採用した。

チラーですか、あまり聞いたことがない名称です。

チラーシステムはセントラル空調とも呼ばれ、ショッピングモールや大規模病院など人流が多い施設や、船では大型客船で採用されている。
反対に日本の一般船舶や練習船での採用事例は少ないね。
簡単にシステムを説明すると、チリングユニットと呼ばれる装置で冷水を造り対象内に配管を巡らせ、AHU(エアーハンドリングユニット)で新鮮な空気を送り込み、要所に設置されたFCU(ファンコイルユニット)で室内の空気と熱交換して、冷房している。

どうして、日本船であまり使われていないチラーシステムを採用したのですか?

それは、次の4点を考慮したからなんだ。
① 感染症(コロナ)対策として有利だと考えられること。
② 環境負荷が小さいこと。
③ 各デッキの面積を有効に使えること。
④ 故障時バックアップを行いやすいこと。

①の感染症対策に有利というのは、どういうところですか?
建造当初は、感染症対策をどうするか大変だったとは聞きました。

船内で空気を循環させないようになっている。
給気は外気を新鮮空気処理室から送り込んで、排気は各区画で行う。区画内で完結するように造られているから、現船のシステムとは異なる。
空気を船内で循環させず、常に新しい空気を取入れているので、感染症対策としては有効だろう。
詳しくは次回説明しよう。

②の環境負荷が小さいとは、どういうことですか?

日本船で採用の多いマルチエアコンは、船体全域に冷媒ガスを配管しなければならない。そのため、温室効果の高い冷媒ガスの量が多くなり、漏洩する危険性が高くなる。
環境基準の厳しいヨーロッパでは、チラーシステムの方が船舶への採用が多いことからも環境負荷の考え方はわかるよね。

なるほど!理解できました。

環境問題対策は、代船のコンセプトの一つだからね。

③の各デッキの面積を有効に使えるというのは、どういうことですか?

代船クラスの大きさの船では、マルチエアコンだと7台の空調機が要るので、それに見合った広さの空気調和機室が必要になる。
だが、代船では新鮮空気室から空気を送り込めるので、2台の空調機で賄えることができるから、空気調和機室を船底部に設置できた。
実用スペースは、チラーシステムの方が広くとれるというわけだ。

実習スペースが広く使えるのはいいですね。
④のバックアップはわかりました。
発電機と一緒ですよね。
万一どれかが故障しても、故障していない方のユニットを使って冷暖房が可能になる!

そのとおり。

もうエアコンのない生活なんて考えられません。
でも、エアコンって同じ装置を使って夏は涼しく、冬は暖かくできるなんてすごいですよね。

チラーシステムに絞って説明すると、熱源を作る設備が異なっていて、冷房時は冷水をチリングユニットで造って、暖房時はボイラで作った熱で温水を造っている。

冷水で冷房、温水で暖房は分かりやすいです。

マルチエアコンはシステムがシンプルであること、それぞれの部屋で自分が望む温度に調節できるといったメリットがある。
だけど、船舶では室外機が塩害や振動によって傷むから、かなりメンテナンスが必要だ。
それに、マルチエアコンでは冷え込んだ寒い日は温まりにくいから、温めやすいボイラを使用するチラーシステムの方が良いところもある。
また、本船ではそれぞれの部屋にFCUを設置することで、各部屋でもある程度温度調整を可能になると同時に、従来のチラーシステムと比べて熱処理の効率が上がり、エアコンの消費電力を抑え省エネ効果も上がった。
それぞれの特長を理解し、その船にあった設備を採用するべきだね。

そんな話を聞いていると、船内に設置される機器に興味が湧いてきました。
快適に空調された船内で、学習を進めていきます。

チラーシステム

マルチエアコンシステム